ガススプリングの基礎知識
ガススプリングの仕組みや種類、使い方などの基礎知識をご紹介します。
実際の製品選定については、ガススプリングお問い合わせフォームよりお気軽にお問い合わせください。
ガススプリングとは?
ガススプリングとは?
ガススプリングは、直訳すると「気体のばね」。
普通「ばね」というと、コイルばねや板ばねといった機械的ばねをイメージするかもしれません。機械的ばねは、力を加えると変形し、力を取り除くと元に戻ろうとする、物体の弾性を利用して伸び縮みするものです。
対してガススプリングは、ガスとオイルの圧力によって伸縮します。ガス・オイルの量、寸法の工夫で圧力を調節できるので、機械的ばねより複雑・繊細な動きを設定できます。
あくまで「ばね」なので、エアーサスペンションとは異なり、跳ね上げる動きが得意です。
基本は、チューブとロッドで構成され、ロッドが摺動することで、部品として機能します。種類によって中の構造は変わりますが、ここでは標準的なタイプを例にあげています。

ガススプリング(気体のばね)

コイルばね
ガススプリングの基本構造

-
圧力チューブ
ガスとオイルを封入したシリンダーチューブ。
※ 通常、チューブの中身は目視できません。 -
ガス(圧縮窒素)
加圧されたガス。
-
オイル
ピストンの摩擦を弱める潤滑油であり、ロッドを錆にくくする効果も。ガスが漏れにくいよう、圧力チューブを密閉する役割も果たす。このためオイルが下にくるのが正しい取付方法。ガスが下にくると減衰機能やガス漏れにつながる。
-
ピストン
ロッドの先端についている。オリフィス(孔)が空いており、ガスとオイルがその孔を通って2つの部屋を行き来する。
-
ガイドおよびシーリング
ガスとオイルを密閉し、圧力チューブの外にある常温圧力から内部を守る。
-
ピストンロッド
先端のピストンがチューブに沿ってすべって動く。
ガススプリングの仕組み
ガスの反力が「スプリング」になる


①〜③、どの状態でも、圧力チューブ内のガス量はつねに一定です。
①のとき、ガスはチューブの容量いっぱいに広がっています。

しかし②のようにロッドを押し込むと圧力チューブはその分狭くなります。
ガスの量は変わらないので、ガスは圧縮され、チューブの容積が減少しガス圧が上昇します。

ロッドを押し込むのをやめれば、圧力の上昇したガスがロッドを押し戻し、元に戻ろうとします。
膨らんでいる風船を指で押したら跳ね返されるのと同じような動きです。

このガスの反力が「スプリング」として機能するしくみです。
ロッドが「動ける」理由

中の仕組みを詳しく見てみましょう。
圧縮チューブの中は、ピストンを境にAとB、2つの部屋に分かれます。
ロッドを押し込むとピストンがAの方に動いて、Aにいるガスが圧縮されます。
圧縮されたAのガスは、ピストンに空いている細い穴(オリフィス)を通って、それぞれの部屋を行き来するため、ロッドが動くのです。

ロック機能付きのガススプリングは、このオリフィスの仕組みを逆利用したものです。
オリフィスの開閉でロック機能をコントロールしています。
ピストンの動きについて
2つの部屋が繋がっているのであれば、ガスはそれぞれで半分ずつになりそうですが、なぜガスは常にAの方に行く(ロッドが常に伸びる)のでしょうか?
それには、ピストンの形状が影響しています。ガスの力は、ピストンを押してロッドを動かします。
そのピストンを見てみましょう。


Bのロッドがつく分、面積が狭いことが分かります。そのため、ガスの力は同じですが、面積が広い分、Aのほうが押す力は強くなります。そのためピストンは、常にロッドがあるB側に押されるのです。

ロッドが伸びていき、最後の方に動きがゆっくりになるのは、ガススプリングの「油圧減衰」機能のためです。

ガス:早い

オイル:遅い
ロッドが動くとき、ガスとオイルでは、ピストンの孔を通る速さが違います。オイルの「遅さ」を利用して、スプリングの勢いをやわらげています。

ほかにも、ダイナミックダンピング(動的減衰)タイプがあります。
ピストンには孔がなく、圧力チューブに溝があり、ピストンの動きやすさで速度が変わります。
オイルと違い、取付角度の自由度が高いメリットがあります。
ガススプリングのメリット
ガススプリングのメリットの一つは、コンパクトなのに強い力を発揮できることです。
例えば機械ばねと比較するとほぼ同じサイズで、約5倍の差があることが分かります。コンパクトでも大きな力を発揮するため、車やATMなど、さまざまな場所で活躍しています。
また、ガススプリングは機械的ばねと比べて圧縮比も均一です。

ガススプリング
Φ22 × 210mm
500N

機械ばね
Φ22 × 200mm
97N
圧縮比とは
①より②のほうがばねを縮めるのにより強い力が必要になります。例えば1にかかる力を「10」、2の力を「100」とした時、このばねの圧縮比は 100÷10=10 になります。
圧縮比が高いと、例えば蓋を閉じるとき、最初は軽くても、閉めきる直前は重くて閉まらないということが起こります。
一方、標準のガススプリングは、圧縮比が1.2〜1.4です。縮めるストロークが長くなっても、力の差が小さいので、反力が安定します。

伸びる力と縮む力の変化と
選定ポイント
ガススプリングの伸び縮みする力の変化は図のように見ることができます。
2つのオレンジ線がロッドの伸縮する力を示し、圧縮比が小さいほど、この線が水平に近づきます。

見るべきポイントは次の4つです。
- 縮み始めて 5 ミリのときの力(F3)
- 完全に縮む 5 ミリ手前の力(F4)
- 伸び始めて 5 ミリのときの力(F2)
- 完全に伸びる 5 ミリ手前の力(F1)

伸びる力(F2→ F1)よりも縮むときの反力(F3→ F4)が高いのは、ロッドを押し込むときに摩擦(FR)が起きるためです。
なお、ガススプリングを選ぶときは、ロッドが完全に伸びる5ミリ手前の力、一番弱くなるF1を基準に考えます。
ガススプリングの種類
ガススプリングを選ぶときは、まず、つくりたいものの動きや操作感をイメージし、それに合った機能・特性の製品を探してみましょう。
在庫品 | 受注 対応品 |
特注 対応品 |
主材料 | 任意の位置 でロック |
シリーズ | 特長 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
● | ● | 鋼 | × | LIFT-O-MAT | - | 樹脂製アイレット仕様、金属製アイレット仕様、ボールスタッド仕様からお選びいただけます。 | |
● | ステンレス | × | IndustryLine | ステンレス | 耐食性の求められる環境に適しています。 | ||
● | 鋼 (特注でステンレスも可) |
× | IndustryLine | 引き込み式 | 天井の下蓋や、下開きの扉を引き込んで閉めた状態を保持することができます。 | ||
● | 鋼 | × | IndustryLine | 小型 | 装置内部などスペースがあまりない場所でも取り付けることが可能です。 | ||
● | 鋼 | △ (伸びきった状態のみロック) ※オプション |
LIFT-O-MAT | アッセンブリー シリーズ |
伸長力をご指定いただく受注対応品で、ロッド側・シリンダー側部分も豊富なバリエーションの中からお選びいただけます。オプションのロッキングチューブを装着することで、伸びきった状態でのロックもできます。 | ||
● | ステンレス | × | LIFT-O-MAT | ステンレス アッセンブリー シリーズ |
伸長力をご指定いただく受注対応品で、ロッド側・シリンダー側部分も豊富なバリエーションの中からお選びいただけます。 | ||
● | 鋼 | × | LIFT-O-MAT PTL | ラッチ機構付 | 収納位置で保持でき、押し込むことでラッチが解除されてガススプリングの力で伸長するため、プッシュオープンとしてご利用いただけます。 | ||
● | 鋼 / ステンレス |
○ | BLOC-O-LIFT | ロック機構付 | テーブルのようにしっかりロックできる剛性的ロックと、椅子の上下昇降や背もたれのようにクッション性を持たせてロックできる弾性的ロックの2種類のロックがあります。ロック解除用アクセサリーも3種類からお選びいただけます。 | ||
● | 鋼 / ステンレス |
× | IndustryLine | ダブルストローク | 強弱2種類の伸長力のシリンダーを持ったガススプリングです。閉じ始めが重くて閉めるのが大変だった大型で開き角度が大きい蓋も、軽い力で閉めることができます。 |
標準タイプ
重いものを持ち上げたり押し下げたりする操作の補助に向いています。
例としては、車のボンネットや装置のカバーなどでよく使われています。

装置の上カバー

乗り物のハッチ
プッシュオープン
基本的には標準タイプと同じ機能ですが、押す操作でラッチを解除して使用します。
例としては、収納式のコンセントタップなどがあります。頭部を押すと自動でゆっくり上昇し、使用後は押し込むことで収納できます。



ロックありタイプ
ロック機能には任意の位置でロックする「剛性」とロック後の衝撃を吸収してクッション性を持たせる「弾性」の2種類があり、ロックのかかる位置も、用途に合わせて選択できます。
例としては、テーブルを上下昇降させるなら、しっかりロックするために剛性タイプを、オフィスチェアを上下昇降させる場合は快適な座り心地を保つために弾性タイプなど。

剛性
任意の位置でしっかりロックする

弾性
ロック後の衝撃を吸収して
クッション性をもたせる

スタビラス社は、1962年に世界初の量産ガススプリングを開発した、80年以上の歴史を誇るドイツのガススプリングメーカーです。
製品の選び方がわからない…
そんな時には
実際に製品を選ぶ上では、時間経過による反力低下を前提に、使用年数を考えて選ぶことが大切です。
製品の選び方が分からない場合は「ガススプリング選定依頼フォーム」がおすすめです。
寸法や使用環境を入力するだけで、最適な製品を提案します。